寅治郎トライのラジオブログ

   ~ All My Writing Is A Gas♪ Gas♪ Gas♪ ~

「老人と海」 読書感想文 vol.3

どうも寅治郎トライです。

ヘミングウェイとイングウェイ、ウェーイ飲み会に参加。

老人と海
こちらはヘミングウェイの小説になります。この作品でノーベル文学賞を取りました。テーマも『自然と人間』『老いる人間』など世の中的にも普遍的なものを含んでいます。また、こねくった内省を抑えめにしたハードボイルド文体なので割とサラサラ読めるんではないかと思いました。以下感想です。

【老人と少年】
作品内でのマノーリン少年と老人サンチャゴの関係は微笑ましく美しい。かつての農村型共同体、漁村型共同体では共同体全体で子供を育てるみたいな感覚があったといいます。そういう社会や共同体では、自分の血縁関係の無い老人とでも、子供や若者はそれなりに接点があったようですが核家族化が進んだ現在では、マノーリン少年のように若年層と気の合う老人とが巡り合って打ち解けるのは中々難しいと思われます。マノーリン少年と老人サンチャゴのような関係は昨今、成立し辛いんだと思います。そしてかつての共同体であっても、少年は大人になれば仕事に勤しみ老人とは一緒にはいないでしょうし、老人は時間が経てば体調の問題もあり少年とは一緒にいない。つまり二人の間柄は、ありし時代、人生のある期間にしか成立し得ない、儚い人間関係だと思います。




【若者の役目】
作品に習って老人と若者の関係を考えてみます。個人的に象徴的に思えたのは、物語の最終盤、少年が老人と漁に出たいと申し出るも、直近の漁が上手くいかなかったこともあり、老人は自分のことを運がなくなったと言って渋る場面。漁の誘いにいい返事をしない老人に少年は「運は僕がもっていくよ」と言い放つ場面。
 若いとはある意味での運のよさではないだろうか?と私は思います。特段努力して勝ち得たワケでもないのに気力や体力が充実している状態を得られているのは生物として運がいい状態ではなかろうか。そして言うても努力レスの運なのだから、運の良さをちょっとだけ老人に使って上げるべき。そうすれば老人の生き安さの一助になるんじゃないのか。かと言って老人は運を貰ってばかりかと言えばそうではない、老人は元々若者に富と時間と愛情を与えていたわけですからねぇ、ギブ&テイクの根拠は成立はしていますしね。しかし近年の若者は自分!自分!で老人と共に過ごすのを疎んじる傾向にある。

【老人の役割】
またまた最終盤、物語は老人が少年にハードだった漁の話をすること約束する場面があります。ここにも人生の真理が象徴的に示唆されているように思われます。当たり前ですが、老人や壮年以上の人は、自分の体験や知恵を若い世代に伝えることが、社会的な使命みたいなモノなんだろうと思いました。がしかし現代社会の若者が中々老人の言葉に耳を貸すかと言ったらそうではない。ここでも若者の自分!自分!が発動することが多い。

【総括】
とまあ、若者の役割、老人の役割、など当たり前のことに気付かされる小説ではあるけれど、中々上手くいかないのが現代社会。老壮青が上手く機能し合ってこそ豊かな社会と考えれば、どちらが歩みよるか、譲るかしないと、貴重な知恵がただただ失われてしまう。かつての漁村型共同体や農村型共同体の皆で協力型社会は老壮青の分離を防ぎ、知恵の継承と保持としての機能があったんだなぁ、と思うのでした。

【了】



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「老人と海」 読書感想文 vol.2

どうも寅治郎トライです。

カジキ“マグロ”なんて魚は存在しません。

老人と海
こちらはアーネスト・ヘミングウェイの小説になります。ヘミングウェイと言えば、ノーベル文学賞受賞、ハードボイルド、ロストジェネレーション、など文学上の派手に見えるなムーブメントの中心にいた人物、そのような方です。著作には『日はまた昇る』『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』などありますが、これらのタイトルは響きがいいためか、文言を変えてパロディとして手を変え品を変え、現代でもどこかで聞いたことがあると思います。そういう意味では普遍的文学的言語感覚に到達した作家の一人なのかもしれません
 『老人と海』はノーベル文学賞を受賞しました。この小説のテーマはよく『自然と対峙する人間の姿』だとか『老人の生き様』だとか言われますが、実は私はそれ以外に、構成全体を比喩として人生を描いたのではないだろうか?思ったしています。

【若年時代・老年時代】
この小説の物語前半は主人公がカジキという大きな獲物を捉えるのを軸として描かれています。つまりこれは人間の若い時代の比喩なんではないだろうかと思うのです。ちょっとくらいヘマが続いてもそれなりには元気もあるし無理が効く、痛みにも耐えられる。大物のカジキを釣り上げて一発逆転もできるかも?そんな人間の胆力や体力に繋がる描写や、射幸心にも繋がる心理描写が続きます。武器もあって持久戦で何とかカジキ仕留めるのが前半のハイライト。




しかし後半は、サメの襲撃を受けてしまいます。世の中には『年取ると何もいいことがない』だとか『人生が暗転した』なんて言い方があるように、後半は劣勢に回る主人公が目立ちます。サメの襲撃で武器を失い、どたんばの知恵を働かせて苦し紛れで対応する場面が多くなります。しかも前半に取った獲物を少しずつ奪われる。そして獲物を取るかいがあったのかなどと、根源的な自問をし始めたりもします。これらの内容は人間社会の現実ともリンクしているように思えます。若い時代に頑張って手に入れた物が、当時はそれに心酔していたりもするのですが、時が経つとその輝きがあせて見えたり、本当に価値があったのかなどと思えたりするもんですよね。ということで後半は人生の夕暮れを描いている様子。更に最終盤には、せっかくと取ってきたカジキの骨も無意味なクズになるのを示唆するかのような描写などあり、正に人生の無常を表現しているかのよう。

【総括】
つまり前半と後半で、人生の登り坂と下り坂を表現している。主人公が前半部から老人が設定なのは、生物はみな老いる宿命にあるので、今若い人間も潜在的老人であるため、老人設定でも変じゃない(かも)。そんな構成の比喩が『老人と海』には潜んでいるんではないでしょうか?

【了】



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「老人と海」 読書感想文 vol.1

どうも寅治郎トライです。

ウイスキーのブランデー割こそハードボイルド。

老人と海
こちらはアーネスト・ヘミングウェイの小説になります。ヘミングウェイと言えば、ノーベル文学賞受賞、ハードボイルド、ロストジェネレーション、など文学上の派手に見えるなムーブメントの中心にいた人物、そのような方です。『老人と海』でノーベル文学賞を受賞しました。なので多くの人は作品名や『ヘミングウェイ』の名前はどこかで聞いたことがあるんではないかと思います。また他の著作に『日はまた昇る』『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』などありますが、これらのタイトルは響きがいいのか文言を変えてパロディとして現代でもどこかで聞いたことがあると思います。そういう意味では普遍的文学性言語感覚に到達した作家の一人なのかもしれません。

【ハードボイルド文体】
ヘミングウェイの小説に用いる文体をハードボイルドと言ったりするそうです。ハードボイルドとはウィスキーかブランデー好きなキャラクターがドンパチする小説ではなく、人間の内省描写を少な目にして客観描写中心に描く小説の手法だそうです。『老人と海』では老人が一人で、海や魚ひいては自然と対峙する物語であるため、他の人間とのやり取りで内面が変化していく的な要素が極端に薄いです。実はこのような内容とハードボイルド文体は個人的にはけっこうしっくり来るんではないかと思いました。




【老人問題】
昔から老人はそれより下の世代から疎まれてしまう社会風潮があるように思います。分かってはいるんですが、これはあまりよくないことだと思います。過去には姥捨て山なんて風習のある地域が存在したなんて言うのは象徴的。結局今若い人は、現在老人の若い時代の時間と富と愛情を食って生きてきた側面があるわけですから、いやむしろそれらがないと今現在存在すらしていない。老人の持っている旨味だけを利用だけしてポイ捨て、それを誠実で純粋で感性豊かと言われる若者がやるというのはあってはならない。あまりにも無礼ではないか。なので老人達に感謝することはあっても疎んじるのは違うんじゃないかと思うのです。

【老人と下の世代】
とまあそんな、昨今にも繋がる老人問題としても読み解くことができるのが『老人と海』だったりします。例え年を重ねて、ヘマが続いても主人公サンチャゴは漁師として鍛えた経験、知見、胆力、知恵があるので大物のカジキを仕留めることができる。これは何を意味するかと言えば『丁度いい場所さえ探せていれば、老人は社会的にも個人的にも輝く』ということ。それを担うのは行政の仕事である一面はありつつ、ただひたすら行政にだけ任せていていいのだろうか?何も「仕事のハコを下の世代が個人的に用意しろ」ということではなく、普段の接し方など含めて下の世代が老人の居やすい場所作りをもう少し頑張れば老人の『輝き』の一助になるのではないか。老人のおかげで『輝か』せて貰った老人より下の世代が担うべきことはもうちょっとあるんではないか。

【シン・繋がり】
かつての漁村型共同体や農村型共同体にあった老人との繋がり方はもはや無理ならば、昨今隆盛のデジタルインフラを使うというのはどうだろうか。近年のデジタルインフラはそれまであり得なかったものを繋げてきた、なので孤立する老人もしっかりと社会に繋げることができるのではないか?頭のいい人よ!何か編み出してくれ!

【了】

【notice!】
このページ内ではご年配の方を指すのに『老人』という単語を多様させて貰いました。小説のタイトルで『老人』という言葉使いをしているので、そこに習ってのことです。なのでこのページに限り『老人』という言葉には年長者を腐する意図はありません。どうかご理解お願い申し上げます。



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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」読書感想文 vol.4

どうも寅治郎トライです。

村・K・春樹氏の次の著作は『電気羊をめぐる冒険』です。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
こちらはSF作家のフィリップ・K・ディックの1968年の小説になります。今更でしょうが映画『ブレードランナー』の原作としても知られている作品です。そして『ブレードランナー』はサイバーパンク映像美の元祖みたいな作品です。つまり現在のサイバーパンク的な価値観やアートビジュアルはまさにこの小説から始まったということになります。なので近年のポップカルチャー史などに強い影響を与えた重要作品だと思われます。

またSF作品にしてハードボイルド調のドンパチものと言えるこの小説は、ワザとらしい説明は控え目にすることで、作品にカッコよさと緊張感をもたらしています。その一方で、タイトルからして読者の見解が分かれたりもしているようです。そこを独自解釈してみます。




【電気羊の夢?】
アンドロイドと電気羊、一応双方、未来的な世界観を表現するキャラとして登場していますが、実内容ではアンドロイドと電気羊は直接対峙してのやり取りがありません。なのでタイトルで『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』と言われると少し奇異に聞こえたりします。アンドロイドと電気羊は同じ物語には登場するも、絡んでるようで絡んでない、と思えてしまうからです。
 
ただし一箇所、タイトルと似た物言いが物語後半あるにはあります。リックが思慮を巡らすシーン『人間に仕えるばかりのアンドロイドは雇われの無い身分を夢見たりするのか?雇われじゃないもっといい暮らしを夢見るのか?』と思索に耽るのです。もちろん明確な答えを出すなどではなく、リック自身が瞬間的にそう思った程度で。しかしその場面でも『電気羊の夢』とは言っていない。

そんなリックの取止めもない思慮に、更に物語冒頭で示されたリックの志向『今は電気羊を飼っているが、実は人口物の電気羊を快く思っていない。本物の生物に飼うことに憧れている』を足しつつ、更に小説の設定『人間とアンドロイドの境界の薄すくなった世界』を総合すると、この小説のタイトルは、

「アンドロイドは、電気羊のような人口物で何かの代替物として決定づけられた生き方を夢見るのだろうか?いや、アンドロイドだってひょっとしたら人間が望むように、感性が開放されたような生き方を憧れとして夢見たりもするのかも?境界の薄くなった世界だしね」

みたいな意味なのではないかと、私は夢見ています。

【了】



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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」読書感想文 vol.3

どうも寅治郎トライです。

レイチェル・K・ソンの次作は『電気羊たちの沈黙の春』です。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
こちらはSF作家のフィリップ・K・ディックの1968年の小説になります。周知の事とは思いますが『ブレードランナー』の原作としても名を馳せている作品です。また『ブレードランナー』は現代のサイバーパンク観を作り上げた元祖みたいな作品です。つまり現在のサイバーパンク的な価値観やアートビジュアルはまさにこの小説が起源ということになります。なので近年の映画史やポップカルチャー史などに強い影響を与えたメルクマール的な作品なんではないかと私は思っています。

【作風】
あまたあるSF小説などでは『人間自らが作り出した科学技術に皮肉にも人間が翻弄される』なんて作品が多いですが、この小説はもちろんそういう線はありつつも、アンドロイドと人間の境が薄くなった世界での人間心理やアンドロイド心理が描写されます。そういう色合いの強い小説かと思います。
 またSF作品にしてハードボイルド的でドンパチものという解釈もできるこの小説は、説明説明したモノいいは控え目な筆致の作品です。なのでいくつか、解釈が難しい点があったりします。その中の一つレイチェルの挙動を独自解釈してみます。




【レイチェルが山羊を殺した理由】
何故レイチェルは主人公リックの飼っていた山羊を殺したのか?本編ではレイチェルは主人公リックとセ●クスするとこで、アンドロイドに感情移入させてリックにアンドロイド殺しをできないよう心理的圧力をかけます。しかしその圧力を跳ね除け、リックはアンドロイド殺しを敢行。レイチェルにして見れば自分が仕掛けた工作が失敗に終わったということになります。そんな背景から鑑みるにレイチェルがリックの山羊を殺したのは、恐らく

  • 工作が上手く行かなかったその腹いせか、
  • はたまた山羊殺害の直後のレイチェルはリックの嫁に見られても堂々としていた、ということなのでローゼン協会としての警告か示威行為か意趣返しなのかもしれない。
  • あるいはリックへloveの匂いも漂わせていた感じもありましたので、セ●クスしても男をコントロールできなかった女としての不満とかなんではないかと思います。
  • それかリックから直近の愛を貰ったという嫁へのマウント取り。「人間の嫁にアンドロイドの私が勝ったぞ!」的な。リックの愛した生物である山羊を殺すことで「リックに生物は要らない!私というアンドロイドを愛していからな!」みたいな内容を示唆したとか。

 アンドロイドと人間の境界の薄さが設定の物語なので、アンドロイドの人間的な苛立ちや承認欲求を描写したということなんではないでしょうか?個人的には痴情のもつれ説一択ですけどね。

【了】



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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」読書感想文 vol.2

どうも寅治郎トライです。

トマス・ハリスの次作は『電気羊たちの沈黙』です。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
こちらはSF作家のフィリップ・K・ディックの1968年の小説になります。そして言わずもがなでしょうが、映画『ブレードランナー』の原作としても有名な作品です。そして『ブレードランナー』はサイバーパンク映像美の起源みたいな作品です。つまり現在のサイバーパンク的な価値観や美意識はまさにこの小説から始まったということになります。なので近年の映画史、アニメ史などにも影響を与えたも重要な位置にある作品だと思われます。
 ざっくり言うと『未来世界での火星でアンドロイドがプログラム外の行動を起こし人殺をやってそれから逃れるために地球にやって来た、のを地球の人間の賞金稼ぎ刑事が追いかける』そんな物語。
SF作品などでは人間自らが作り出したメカやロボや科学技術に結局人間が翻弄される、なんて作品が多いですが、この小説はもちろんそういう軸はありつつも、アンドロイドと人間の薄くなった境について右往左往する人間心理とアンドロイド心理?が読みどころなんではないかと思います。

【性愛】
人間とアンドロイドの境の薄さを指摘するこの小説の含意の一つに、人間はアンドロイドを愛することはあるのか?という問いかけがあるように思います。個人的には遠い未来になら「ある!」と思います。何故なら今現在でさえ、二次元のアニメキャラクターに過剰な愛情を注ぐ方がいますし(男女問わず)、メカに萌えやフェチを感じている方もいます。芸能人という、生の人間とは違うメディア上の存在に異性として胸がトキめいたりもする。その延長線上を考えればアンドロイドとの色恋はあると思うのです。




 次に性。例を上げればエ●漫画で人としてのちゃんとした意味でのムラムラを発する人ががいるから、エ●漫画の市場は成立している側面があります。エロ漫画はあくまで人工物。人は人工物にも十分にエロスを感じたりしているということになります。つまりはアンドロイドにもエロスを感じることはあり得るハズ。もちろん相当にヒューマノイド度の高いアンドロイドが対象ではありますが、未来的には小説の主人公同様、アンドロイドとのセ●クスはあると思います。

【揺れ動く!】
じぁあかといって、主人公が異性のヒューマノイド型アンドロイドに思いを寄せるから完全に人間がアンドロイドに融和的なワケではないのがこの小説のリアリズムというか人間のリアリズム。主人公は精巧な電気羊を軽蔑的に見ていて、本物の動物を飼うことの方がステータスだと思っているし、本物のヒキガエルだと思っていたものが模造品だったと分かった時には落ち込んだりもします。ある対象に対して愛憎半ばで揺れ動いたりするのが人間だったりするってことなんでしょうかねぇ。

【了】



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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」読書感想文 vol.1

どうも寅治郎トライです。

寒がりなサイバーパンクスです。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
こちらはSF作家のフィリップ・キンドレッド・ディックの1968年の小説になります。ざっくり言うと『未来?世界での火星でアンドロイドがプログラム外の行動を起こし人殺をやってそれから逃れるために地球にやって来た、のを地球の人間の賞金稼ぎ刑事が追いかける』そんな物語。アンドロイドを追ううちに、刑事が元々持っていたアンドロイドへの思いが右往左往する、その辺の心理描写が読み所、といった感じの小説です。

【予見の書】
過去に書かれた小説が現代を起こっていることを予見していた、なんてことがあると結構話題になるものですが、私はこの小説はそういう要素をふんだんに持つ作品なのではないかと思います。

  • 小説中よく出てくる『映話』は現在で言う『ズーム』か『ビデオ電話』になろうかと思います。
  • 小説ではアンドロイドが火星で人間の世話役として機能していたりするのは、まさに現代のシリやアレクサのAI技術の発展形だったりするし、
  • 電気羊はソニーのアイボ?に置き換え?
  • 第三次世界大戦核兵器が使用された、という設定も現在似たような危惧がされてりしています(ウクライナ危機2022)。

と、このように1968年の作家の想像力で書かれた内容に、現代が追いつこうとしている様にさえ見えてしまう。ある意味この小説は未来を言い当てた予見の書なのではないかと思うのです。




【作品の影響力】
更に言わずもがなでしょうが、この小説は映画『ブレードランナー』の原作としても有名な作品です。そして『ブレードランナー』はサイバーパンクの映像化の始祖みたいな作品です。つまり現在のサイバーパンク的な価値観や美意識はまさにこの小説から始まったということになります。なのでサブカルチャー史的にも重要な位置にある作品だと思われます。
 また、かつてサブカルチャー界隈では、この小説のタイトルの語感からインスピレーションを得て『●●は○○の夢を見るか?』みたいな物言いが流行ったと言います。流行ったということは、文学的に人の心を打ったフレーズ、文学的に成功したフレーズと言ってよいかと思います。

【総括】
ザッと見ても『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は現実の未来を先取りしたような描写や設定が多く、そしてその影響力は小説の域を越えた所にまで及びます。つまり、色んな意味でのファーストペンギン性が散見される作品です。SFだからと言って軽く思うことなかれ、重々しい純文学や哲学書だけが人間のナンチャラに迫れるワケじゃない、SFだからこそ人間の未来や本質に迫ることができる、それを教えてくれる作品なのです。

【了】



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「桜の樹の下には」梶井基次郎 読書感想文

どうも寅治郎トライです。

散る桜、残る桜も、チル桜。
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桜の樹の下には
こちらは作家・梶井基次郎さんの短編小説になります。『桜の樹の下には』の後には『屍体が埋まっている』という下の句が続くのをどこかで聞いたことがある人もいるかもしれません。そのフレーズの起源がこの小説だそうです。『桜』という美しさの象徴のようなモノに『屍体』というちょっと怖い言葉を絡めているため、奇怪な印象を人々に与えるようで『桜の樹の下には屍体が埋まっている』というフレーズが、そのまま都市伝説にもなってしまってるなんて話も聞いたりします。とまあ作者の意図通りだったかはわかりませんが、後世の人々にそれなりに浸透している側面を考慮すると、普遍的な文芸力のある一文ということになるのかもしれません。
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【勝手読後感】
桜の樹の下には屍体が埋まっている』というフレーズを「キレイな物事の裏では何かしらが搾取されていて、それでキレイが成り立っているのだ」という内容の比喩ではないか、と思うのは自然かと思います。しかし小説を通読すると、私はちょっと違う印象を受けました。小説は全編通して、おどろおどろしい描写や不穏なイメージを想起させる言葉に満ち満ちているからです。『他者を搾取しているからキレイが成立』などのメッセージを込めるというよりは、ただひたすら呪いの言葉を発するような物言いの連続。



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梶井基次郎と病気】
梶井さんは幼い頃から結核を患っていたと言われております。結核はかつては死にもつながる不治の病と恐れられていた病。幼い頃から体調のいい時でも病気の恐怖などを悩まされていたのかもしれない。そういう心中の人が、美しい『桜』を見て素直に美しいと思えない時もあるのではないか。一説には他の梶井作品である『檸檬』に描写されている『不安』は病気のことを言っているという解釈もあるそうです。つまり病気の影響が梶井作品に反映されている可能性があるということ。
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【勝手分析】
翻って『桜の樹の下には』に見られる呪詛の言葉達は、恐らく『他者を搾取しているからキレイが成立』などという物事の多様な視点を啓蒙する文化的なメッセージなどではなく、病気への不安か死への不安に対する補償行為なのではないでしょうか。小説本編では主人公と他者のやりとりなどはなくとても内省的です。病気の不安はそもそも真の意味では他者と共有することはできません。また、梶井さん自体若かったこともあり病気の不安に、若い時代特有の過激な想像力と妄想力を頼りに、負の言葉を綴ることで孤独に抵抗したんではないかと私は思うのです。その記録が『桜の樹の下には』だったりするんじゃないですかね。

【了】



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「檸檬」梶井基次郎 読書感想文

どうも寅治郎トライです。

この世で一番レモンチー♪
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檸檬
こちらは作家・梶井基次郎さんの短編小説になります。内容はとても内省的で、更にとても耽美的。主人公と他者のやりとりなどはそう多くは無い『自分度の高い言葉達が行き交う』そんな作品である印象を受けました。初出しが23歳みたいですから、若い時代にしかない想像力と妄想力を頼りに書いたと思われます。なので衝動的で刹那的で儚いフェティシズムで満たされているように思いました。社会派のテイストなどには程遠い、己の美学中心の作品ではないでしょうか。
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梶井基次郎とは】
人間の感性は、若い時と年を重ねてからでは変化するものですが、梶井さんは若くして亡くなっているため、老練の無かった作家だと言えると思います。言うならば梶井基次郎さんの作品には『若さ』しか込められていないことになります。『全作品、若い感性が色濃く出ている』という解釈ができるのではないかと思います。作品は当時の自分の分身でもあります、亡くなったのは病気ですから結果論になりますが、自分の命と引き換えに永遠に残る作品の中で、永遠の若さを手にしたのかもしれません。

【!?】
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檸檬とは】
レモンとは何なんだろうと考えてみます。レモンは香りのある果物。レモンは黄色。レモンは小型の果物。レモンは紡錘形で人の手で掴み安い形をしている果物。果物と言いつつも甘くはない。世の中では甘さを果物に求めるのが常道なのに、レモンは酸っぱい。レモンを目的に食することはないけれど、レモンは掛け合わせによって料理に違った味わいをもたらしてくれる。

  • レモンティー
  • レモンウォーター
  • レモンサワー
  • ハチミツのレモン漬け
  • 唐揚げにブッかける and more!

 などとあれこれ考えてみますと、レモンは若さの象徴なんではないかと思います。決して大柄ではないし、甘くもない。そういう意味では完成されたモノではないけれど、色鮮やかで香りがよくて甘さではなく酸味が心地いい。不完全ながらも不思議としっかりとした存在感を持つ、その存在感は王道というよりはエッヂな感じ。そしてそれが若さであり青春でありレモンなのではないだろうか?
 翻って作品の『檸檬』では、終盤に唐突に檸檬を爆弾に見立てる比喩が出てきます。爆弾とはあまりに物騒で過激な感じがしますが、唐突で物騒で過激だったりするのが若さであったりするものですよね。今風の楽しく時を謳歌する若者感という意味ではありませんが『檸檬』は実は青春小説なんではないかと私は思っています。

【了】



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「二分間の冒険」岡田淳 読書感想文ver.3

どうも寅治郎トライです。

マッチョドラゴンをヘビロテしてます。
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【二分間の冒険】
こちらは作家・翻訳家・教師の岡田淳氏の作品です。私が小学生の頃、学級文庫にあって読んだのを覚えていて、フッとした拍子に最近また読んでみようと思い、手に取りました。小学校の学級文庫にあったものですから、相当に児童向けなのかなぁとも思っていたのですが、改めて読み返してみたら、子供の冒険談に織り交ぜて大人の問題を射抜いているような箇所が多数あり、目から鱗感のある作品だと再認識するに至りました。余談ですが昨今、ライトノベルなどでは『異世界モノ』が流行りだそうです。『二分間の冒険』も違空間が物語の設定。初版が1985年だそうですから実は『異世界モノ』のハシリかも?
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【最初は麗し主体性】
時を経て読んでみて、一番の感想はこの作品はよくも悪くも主体性という視点で読み説くことができるということ。物語の大きな流れは、子供たちが老人達の欺瞞を見抜き、子供同士が協力し合い、知恵でかわして竜という絶対者を打つ、というもの。かつて読んだ時は私自身子供だったので、自分と同じ子供たちが知恵に智く、精悍に動く様子に主体性を感じたものです。若い者が主体性で道を切り開く姿に共感し、主体性の素晴らしさに触れたような気分にもなりました。



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【やがて悲しき主体性】
しかし、大人になった今読むと、その点に関して複雑な気持ちになります。館長なる登場人物が若かりしある時、自分の力に限界を感じ不安に飲まれたため、若さを竜に捧げて、竜の呪術を頼みに老人として安寧に生きてゆくことを自ら選んだというエピソードです。
 よく「主体性を持て」とは教わりますが、そこそこ生きて入れば誰しもが主体的に動いて楽しい人生を送れるわけではないということが分かってきます。主体的な行動には競争が付きモノで、競争で勝つには努力以外に才能や運が必要になるからです。例え一度や二度なら競争で勝っても、勝ち続けるのはできないのではないでしょうか?また、年を重ね自分の力が衰えた時、競争に勝てるでしょうか。主体的に動いた結果、とんでもな痛い目を見ることもあるんではないかということです。
 作品で描かれる老人の館長は、自らの判断で若さという主体性をに竜に捧げて悪魔契約的に自己保身に走ります。つまり人間は追い込まれようによっては『主体的に』主体性を捨てたような格好になってしまうということ。そして物語に沿えばそうやって得た安寧すらも結局は『主体的な』子供達によって破滅させられてしまう物語と読むことができる。そしてその子供達もいつかは年老いて、いつまで主体性に拘っていられるのか・・・
 このように改めて読んで見ますと『二分間の冒険』は怖い物語とも解釈できるのです。ぜひ夏の夜長に必読あれ!

【了】



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「二分間の冒険」岡田淳 読書感想文ver.2

どうも寅治郎トライです。

ウルティモドラゴンの中身は浅井嘉浩氏です。
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【二分間の冒険】
こちらは作家・翻訳家・教師の岡田淳氏の作品です。元々本好き小学生とかではなかった者なんですが、小学生の頃読んだ本で唯一記憶に残っているのが『二分間の冒険』だったもので、何かのした拍子で最近また読んでみようと思い読みました。竜だとかしゃべる猫だとか出てくるんで、けっこうな感じで児童向けなのかなぁとも思っていたのですが、改めて読み返してみたら、現代の大人の問題とも読み取れる箇所が多数あり、意外な発見がありました。話は反れますが昨今、ライトノベル界隈では『異世界モノ』が流行りだそうです。『二分間の冒険』も異空間が物語の設定なっています。初版が昭和60年だそうですから実は『異世界モノ』は普遍的?
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【選民意識か協力か】
作品中、印象的と思った箇所の一つに、子供達が『選ばれし者』というプライドを捨てて他者との協力の道を模索するシーンがあります。物語に登場する子供達は皆、自分達が『竜を倒す選ばれし者』と老人達に教え込まれます。当初は子供達もそれを信じるのですが、時を経て『選ばれし者』という教えは子供達を誘導するための嘘だったと知るのです。誰だって少しは『自分こそが選ばれし者』のような選民意識を持っていたりするとは思いますが、人間は選民意識が強いと他者との協力を拒む傾向があるように思います。また選民意識が強いとそもそも人は離れていくもの。選民意識を持って入れば気分がいいのですが、個人の力にも限界がありいずれ壁にぶつかる。そんな、他者の協力を得うとする時の心構えや条件が物語で示唆されているように感じました。協力してこその世の中であるならば、人は自分の選民意識のあり方にどうにか折り合いつけねばならないのではないでしょうか。



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【団結パワー】
翻って現代政治。特に昔から野党系政党などは内紛が多いイメージがありますよね。政権取っても内輪モメで崩壊。ちなみに現行の小選挙区制では野党でもまとまれば勝てる風に制度設計されているというのに。何故なのか?側聞するに野党系の方は●●大学卒業とか●●修士号取ったとか●●政経塾出身だとか、若くしてとっても立派な肩書きを得た方が多いんだとか。『二分間の冒険』に習えば若くして得た立派な肩書きは選民意識に傾き安い。個人活動で選民意識持っているなら構わんけど、まとまらなきゃいけない時に選民思想が邪魔をしてるんではないだろうか。『二分間の冒険』では子供達がまとまって恫喝することで亜空間の絶対者・竜に圧力をかけて竜に勝利するという内容が描かれています。つまり肩書きよりも団結することで絶対者を倒す突破力にしている。政治の世界も自分のプライドを折って、まとまればパワーになるんじゃないんすかねぇ、と思ったりしたフリをしてみました。
 まあエラそ~に政治を語りましたが私は特に与党好き野党好きとかはないで、そこんとこヨロシク!

【了】



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「二分間の冒険」岡田淳 読書感想文ver.1

どうも寅治郎トライです。

竜治郎トライではありません。
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【二分間の冒険】
こちらは作家・翻訳家・教師の岡田淳さんの作品です。私が小学生の頃読んで『結構好きなだぁ』という感覚を持ったのを覚えていて、最近また読んでみようと思いウン十年ぶり手に取りました。当時の小学校の同級生界隈で人気があった作品だったと記憶があり、多分に児童向けなのかなぁとも思っていたのですが改めて読み返してみると、ただの子供の冒険心をくすぐるに留まらない、大人にも響く箇所が多数あると再認識するに至りました。話は飛びますが近年のライトノベルなどでは『異世界モノ』が隆盛だそうです。『二分間の冒険』も亜空間が物語の設定。初版が1985年だそうですから実はこの時代から『異世界』という想像力はあったんですねぇ。
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【上下関係に潜む危うさ】
本編では子供たちを指導する立場に老人達が設定されています。が後に老人達は自分らの安寧のために子供達を竜の生贄になるよう誘導していた、ということが発覚します。立場の上の者は下位の者に客観的で適切な指導をするのは実社会でも許されいますが、実はその構造は、立場の上の者が自身の私利私欲のために下位の者を操作出来るという危険性を孕んでいると言えます。
 また亜空間の絶対者の竜は知恵の勝負が好きと言いつつ、知恵の解釈が乱暴で、あまり知恵的なやりとりではないやり方で子供から勝利しその若さをむしり取ります。そこに疑問を持っても絶対者である竜は屁のカッパで子供達にはどうすることもできない。こちらもまた現代社会に当て嵌めると、立場の上のものは自分のやり安いようにゲームメイクし安く、多少のズルやイカサマを不問にできる構造と合致します。私自身、世の中全ての上下関係を否定する立場ではありませんが、麗しく望ましい上下関係に巡り合うの運ゲーだなと思ったりしています。



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【悪しき上下関係に一撃】
んじゃどうしたらよいかと考えますと、作品に倣えば子供達は主体性に目覚め、皆で協力し合い、竜を上回る知恵を編み出して竜の支配を破壊するに至ります。悪しき上下関係や不条理に対抗するには結局それしか無いんだと、一応大人の私の見地では、そのような解釈するに至りました。世の中を生きる上で何かしらの上下関係は避けることはできません。為政者と国民、上司と部下、先生と生徒、先輩と後輩、親と子、上下関係が歪んで作用したために起きた悲劇に思いを馳せつつ、上下関係が健全に働くよう社会全体での仕組み作りや、前習えでは無い知見が常に必要なんだと思いました。
 子供の頃はカッコいい冒険談としか読めませんでしたが、大人になると児童書であろうと、いくらか違った読み方ができるようになるもんですね。それこそが一番の発見でした。

【了】



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トルストイ「光あるうち光の中を歩め」読書感想文

どうも寅治郎トライです。

複数の神社と複数の寺に行く尻軽参拝者です。
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【光あるうち光の中を歩め】
こちらはロシアの文豪トルストイによる作品です。大傑作の誉れ高いとかではく、トルストイの中でも傍流的な作品だそうです。内容を大雑把に言うと、晩年のトルストイキリスト教への思いや信仰心を強く反映させた小説になっております。物語のキーになる登場人物が都合よく現れては、説明的にキリスト教チックな思想を長セリフで炸裂させる感じです。小説の体を取ってはいますが宗教的な寓話や小話に近く、思想色が強いのが読後の印象。私は特にキリスト教信者とかではないですしトルストイ好きでもないですが、タイトルがカッコいいなと思って読んでみたのでした。
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【世俗か宗教か】
この小説では『世俗的な価値観 』と『宗教的な価値観』とが対立的に描かれています。

  • 『世俗的価値観』とはカネ、地位、権力、飲む、打つ、買う、鯨飲馬食、酒池肉林などの価値観を意味し、
  • 『宗教的価値観』とは世俗的価値観を離れ質素な生活をしつつ、神に習い優しく人生や人類を内省するような態度。

作中『世俗的な価値観』を擁する主人公と『宗教的な価値観』を擁する主人公の友達がお互いを批判し罵り合います。世俗と宗教はなかなかにわかりあえない。現代的に言うならば、宗教色の強い国家と欧米風の自由主義が摩擦を起こすみたいな感覚でしょうか。
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【世俗も宗教も】
世の中を眺めますと、若い人々は享楽に明け暮れ、年を重ねた人は急に信心深くなったり農業に目覚めたりする傾向があるようです。その辺から鑑みるに、結局人間は世俗も宗教も価値観として両方持っていてもいいんだと思うのです。両方ある!ってことを認めたらいいと思うのです。人は時に横島で助平なものに心引かれるし、神や仏にすがる時だってある。そういう、ある意味での2兎を追うような尻軽性が現代のテーマでもある多様性に繋がるのではないでしょうか?もちろん尻軽にもマナーや礼節を忘れずにってことですけどね。尻軽こそ多様性ッ!



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【宗教の価値とは】
作品では結局『世俗的価値観』を持っていた主人公が宗教面に寝返るというラストなんで、宗教の意義を考えたフリをしてみます。私が思うに、生きてりゃ誰だってとんでもないファ●クな不条理で辛い思いしたりしますよね。資本主義がどんどん高度化し複雑化しても合理で何でも割り切れる問題ばかりじゃないんです、世の中って奴ぁ。そういう時こそ、人は宗教に触れて心の在り方を固めるべきなのです。宗教的言説は必ずしも論理的ではないのですが、何かを耐えなくてはいけない時、何かを乗り越えなくてはいけない時、イミフな非論理に打ちのめされた時『合理ではない思想で構える』そんな価値観を宗教は提示してるんだと思うのです。もちろん宗教だけではなく哲学や文学なども同等の価値を含みます。ただ、弱った人間に付け込む卑しいビジネス宗教もあるみたいですからそこは気をつけながらですけどね。

【了】



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RNCラジオ「街の小さな文学賞」ラジオ感想文

どうも寅治郎トライです。

半空は『なかーぞら』と読みます。
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【街の小さな文学賞
こちらはRNCラジオで2021年の01月から09月までの第1火曜、第3火曜日と、2021年11月21日にスペシャル版として放送されたラジオ番組です。この番組は第6回半空文学賞についての取り組み、運営、入賞結果、などなどをお伝えする内容になっております。一度限りのピーアール放送などではなく、継続的に「文学賞自体で一つの番組を作って盛り上げて行こう」というラジオと文学賞がコラボした、今までありそうでなかった希有な番組なのございます(過去にあったらすいません)。そして第6回半空文学賞のテーマは『ラジオ』。「文章とラジオ・ラジオと読書は相性がいい」と言ったりしますから、読書癖・ラジオ癖のある方々には垂涎の組み合わせかと思います。
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【半空文学賞
文学賞というと、敷居が高い高級なハイセンスなアート性を想像してしまいがちですが、半空文学賞はそうではなく、より一般層を意識することが発想の基本コンセプトの一つになっているようです。主宰は、香川県高松市にある珈琲と本と音楽をテーマにしたブックカフェバー『半空』。つまり半空文学賞とは、とある地域に根差したカフェバー起源の脱中央的な文学賞なのです。しかも応募原稿は基本、A4用紙片面一枚、文字数制限無し(崩れる敷居を感じるぜぇ!)。そして賞の審査員は、文章のプロを少なめにするという配慮。これまでのテーマも『珈琲』『音楽』『ことでん』『家族』『丸亀城』と、派手ではなくとも日々人々が接している何かが多い模様(敷居完全決壊ッ!)。私は個人的に、文芸とは人の目線を通して人の本質に迫る遊びだと思っているので、人を人足らしめる日頃の日常的な視座から人を見つめるは大切な要素だと信じております。私に限らず、そんな風な文芸観を持っている方は『街の小さな文学賞』は楽しめるハズ。因みに『半空』はYouTubeでラジオ展開もしております。
↓『半空ラジオ』↓
珈琲と本と音楽 半空 - YouTube

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【テクノロジカルなアナログ】
世はデジタルカルチャー、ネットカルチャーなどと言ったりしますから、さぞかし近未来的でサイバーパンクスなギラギラビカビカな世の中が到来するのかと思いきや、人によってはデジタルツールやネットツールを使ってアナログ的な心地よさを探し繋がったりしています。そうやってローカルな思いを深化&進化させたりしているようです。私自身元々のラジオ好きから始まり、radikoという現代的ツールを駆使することで『街の小さな文学賞』に辿りつき、番組の持つギラついてない優しいトーンに共鳴しております。『街の小さな文学賞』や『半空文学賞』にはデジタル時代でなければ出会うことはありませんでした。人や地域性に寄り添うデジタルもあるだんだで!と番組を聞きながら思ったりしています。

【了】



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「芸人ラジオ」読書感想文

どうも寅治郎トライです。

ラジオは地デジ以前から双方向のメディアだったんやぞ!
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【芸人ラジオ】
こちらは以前出版された『お笑いラジオの時間』シリーズの後継的な立ち位置になるムック本だそうです。芸人のラジオファン垂涎の『お笑いラジオの時間』からいくばくか時が経ち、地上波TVでは『お笑い第7世代』なる若い世代の芸人さん達が台頭するようになりました。それはラジオ界隈も同じで『お笑い第7世代』という言葉を生んだ霜降り明星を表紙に迎え、他、新世代と目される芸人さん達のやっているラジオ番組を多数特集しているのがこちらの本になります。とか言いつつも、この本に携わるライターさんや編集さんもやっぱり海千山千のラジオファンであるらしく「キープヤング!ヤングパワーでワッショイ!」みたいな一辺倒のトーンにしないで、一度ANNを引いたラブレターズや、裏方志向のある佐藤満春氏にもインタビューするなど、多様で未来的なラジオへの肉迫も試みられている本でもあります。
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【生き様ラジオ】
私の場合、新世代のやっているラジオで個人的に懇意にしている番組は『空気階段の踊り場』です。『踊り場』はネタオーディション番組から勝ち上がってきた空気階段が手にしたレギュラー放送の冠ラジオ。(たぶん)空気階段のお二人は事務所の推す推さないとか、局の意向とかとは違う所からラジオまで辿りついて、しかもその内容は結婚、妊娠、出産、ケンカ、プロポーズ、離婚、キングオブコント、私の中の池田など。なので自分達の生き様をそのまま反映させているようで、正に身を削り、正に身一つでリスナーを引きつけていて、そのスタイルの潔さに魅力を感じるのです。また空気階段は元々ラジオ癖のあったお二人だったそうですから、色んな意味でラジオと親和性の強いお二人だと思うのです。更に『踊り場』はラジオクラウドに対応していて本放送が基本、第一回から聞くことができるしアフタートークもあり、アプリ対応の今風、未来型に対応しているラジオ番組でもあります。
 
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ハガキ職人の行く末】
個人的に興味深く読ませていただいたのはお笑いラジオ配信アプリGERAチームの皆さん、××CLUB大島育宙さんへのインタビュー記事です。昨今radikoが浸透し、更に掲示板やらツイッターやらラジオを補完するデジタルツールやデジタル機能が増え、また世界がコロナという未曾有の事態に直面するなどで、ラジオ界にも多かれ少なかれの変化があると言われております。つまりはラジオ界に変化があるということは、ハガキ職人周辺にも変化があるということ。つーことでハガキ職人の未来型について言及されてる箇所は非常に示唆に富む内容だと思いました。私もハガキ職人の端くれっぽい事をやっていましたから、刺さる言葉がたくさんありました。ハガキ職人のゴールが変化しているッ! 

芸人ラジオ (スコラムック)

芸人ラジオ (スコラムック)

  • 発売日: 2020/09/12
  • メディア: ムック
【了】



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