寅治郎トライのラジオブログ

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「二分間の冒険」岡田淳 読書感想文ver.3

どうも寅治郎トライです。

マッチョドラゴンをヘビロテしてます。
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【二分間の冒険】
こちらは作家・翻訳家・教師の岡田淳氏の作品です。私が小学生の頃、学級文庫にあって読んだのを覚えていて、フッとした拍子に最近また読んでみようと思い、手に取りました。小学校の学級文庫にあったものですから、相当に児童向けなのかなぁとも思っていたのですが、改めて読み返してみたら、子供の冒険談に織り交ぜて大人の問題を射抜いているような箇所が多数あり、目から鱗感のある作品だと再認識するに至りました。余談ですが昨今、ライトノベルなどでは『異世界モノ』が流行りだそうです。『二分間の冒険』も違空間が物語の設定。初版が1985年だそうですから実は『異世界モノ』のハシリかも?
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【最初は麗し主体性】
時を経て読んでみて、一番の感想はこの作品はよくも悪くも主体性という視点で読み説くことができるということ。物語の大きな流れは、子供たちが老人達の欺瞞を見抜き、子供同士が協力し合い、知恵でかわして竜という絶対者を打つ、というもの。かつて読んだ時は私自身子供だったので、自分と同じ子供たちが知恵に智く、精悍に動く様子に主体性を感じたものです。若い者が主体性で道を切り開く姿に共感し、主体性の素晴らしさに触れたような気分にもなりました。



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【やがて悲しき主体性】
しかし、大人になった今読むと、その点に関して複雑な気持ちになります。館長なる登場人物が若かりしある時、自分の力に限界を感じ不安に飲まれたため、若さを竜に捧げて、竜の呪術を頼みに老人として安寧に生きてゆくことを自ら選んだというエピソードです。
 よく「主体性を持て」とは教わりますが、そこそこ生きて入れば誰しもが主体的に動いて楽しい人生を送れるわけではないということが分かってきます。主体的な行動には競争が付きモノで、競争で勝つには努力以外に才能や運が必要になるからです。例え一度や二度なら競争で勝っても、勝ち続けるのはできないのではないでしょうか?また、年を重ね自分の力が衰えた時、競争に勝てるでしょうか。主体的に動いた結果、とんでもな痛い目を見ることもあるんではないかということです。
 作品で描かれる老人の館長は、自らの判断で若さという主体性をに竜に捧げて悪魔契約的に自己保身に走ります。つまり人間は追い込まれようによっては『主体的に』主体性を捨てたような格好になってしまうということ。そして物語に沿えばそうやって得た安寧すらも結局は『主体的な』子供達によって破滅させられてしまう物語と読むことができる。そしてその子供達もいつかは年老いて、いつまで主体性に拘っていられるのか・・・
 このように改めて読んで見ますと『二分間の冒険』は怖い物語とも解釈できるのです。ぜひ夏の夜長に必読あれ!

【了】



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