寅治郎トライのブログ

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「野中広務 差別と権力」読書感想文

どうも寅治郎トライです。

今日も読書感想文界の狙撃手です。

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野中広務 差別と権力

前半は野中広務氏の「差別」体験、後半は国会議員になってから野中氏はどう「権力」を使って政治をしてきたか、が書かれてあります。また中盤は、野中氏の視点も含まれますが、1993年の政変、その後の自自公政権辺りまでのルポルタージュとして成立していて、読みごたえがあり、あの動乱期の細かな動きが読めて、知的な刺激を満たしてくれます。

世の中には「強くて優しい××」という言葉があります。私自身、人としてそうい美学を実践していきたいなぁとして思うのですが、中々現実的にそういうできるものではありません。本の中では「強くて優しい××」を地で行く野中氏の姿がとても魅力的に描写されています。恫喝、策略、裏取引、を駆使して権力という「強さ」を得て、地元民~国民に「優しさ」を与えます。(「優しさ」って比喩ですよ。)一見「強さ」と「優しさ」は対照的な概念にも思えるのですが、実は「優しさは強さから生まれる」んだなあぁと思いました。そういう「優しさ」もあるんですねぇ。

県政時代に、保守→革新→保守と立場を変節したり、参議院選挙で負けた途端それまで嫌っていた小沢勢力に接近するなど、時に野中氏の行動に「政治的理念がない」と本は指摘しております。しかしイデオロギッシュな内容だけを政治理念と限定せず、

「地元民~国民に優しさを届けること」

「戦争を2度と起こさせないこと」

を政治理念としているのではないか?という補助線を引いて見ると、己の政治理念を脇に置いてでも、まず自分自身が権力という「強さ」を得るという選択肢を選んだのではないかと思えてきます。「差別」と「戦争体験」を経た政治家は、イデオロギーにロマンチックを感じないのかもしれません。そしてイデオロギーとは一部、豊かな世代の遊び道具に変質してしまう時があり、イデオロギーに純粋に成りすぎない方が政治的にリアルで居られる側面があるのかも。

また人が「困難」に直面した場合、思想などのような内側に精巧な世界観を作り上げることで突破するのか、現実にコミットして「困難」から自力で這い上がることで突破するのか、そんな論争があろうかと思いますが、野中氏の勇ましく「強さ」を獲得し行使する姿は圧巻で、後者の方の心により響き励ましてくれる、そんな「勇気の書」という読みができるのも、本書の白眉たる部分かと存じます。

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

〈了〉